ハウス

西洋占星術のハウス

 西洋占星術におけるハウスは、主役となる惑星を選び出すためにも重要です。ハウスを選び間違えると、占断を間違えるとはよく言われる事柄です。勢い、ハウスの惑星を選ばずに鑑定ができればと考えてしまいますが、そうやって判断できるものも中にはあります。

 惑星を把握する前に、ハウスを特定してこそ、惑星を選び出せるとも考えられますしから、ハウスの学習を疎かにはできません。また、西洋占星術で最も難しいのがハウスの選択だといっても過言ではありません。

 
 ハウスは12あって、大地から打ち立てられています。東の空に当たる場所が1ハウスで、強い影響力のある場所です。その他に強い影響力を与えるハウスは、10ハウス、7ハウス、4ハウスです。これら、4つのハウスをアンギュラー、又は、アングル・ハウスと呼びます。次に強い影響力を与えるハウスは、サクシダント・ハウスで、2ハウス、11ハウス、8ハウス、5ハウスになります。残りの3ハウス、12ハウス、9ハウス、6ハウスは弱いハウスと呼ばれ、ケーダント・ハウスとなります。

 
 しかし、この区分は、ネイタルの初期の段階で使われる方式で、どこかの時点で、このハウス方式は読み終えます。実際の鑑定では、この後に、9ハウスをケーダント・ハウスとはせずに、8ハウスと2ハウスを、アセンダントからのケーダント・ハウスとして捉え始めます。この切り替え時点はどこになるのかが、ハッキリしません。ホラリー占星術での判断では、ほぼ2ハウスと8ハウスを、12ハウスと6ハウスのケーダントに加えます。時々、タイミングを見る場合などに元に戻しますが、この理由もハッキリしません。そうした方が間尺に合うからとしか言いようがなく、経験則に従います。
 


1.西洋占星術のハウス

 西洋占星術のハウスがいつ頃から採用されたのかは、ハッキリと分かっていません。ひょっとすると、西洋占星術の発祥以前からの占いの中に存在したものを採用したのかもしれませんし、12のサインに触発されて逆回りの概念を付け加えたかったからかもしれません。

プライマリーとセカンダリー・モーション

 西洋占星術には、プライマリー・モーションと、セカンダリー・モーションが使われています。プライマリー・モーションとはチャートに向かって右回りに動く惑星たち、そしてサインの動きです。この動きでは、惑星たちはサインに張り付いて動いているように観察されます。

 一方、セカンダリー・モーションというのは、季節を追って太陽が牡羊・牡牛・双子・蟹のサインといった、サインを左回りに進んで行く惑星たちの動きのことです。西洋占星術は、このプライマリーとセカンダリーの両方の動きを使った複雑な様相を紐解くものです。セカンダリー・モーションはチャートを見るとハウスに番号付けされていて、これはセカンダリーとなっています。又、惑星は左回りに進むものとしてエフェメリス等から判断しているはずです。

では、プライマリー・モーションはどこに入れ込まれているのでしょう

 実は、ハウスの番号順に騙されていますが、ハウスの概念がプライマリー・モーションで組み立てられているのです。ハウスの概念とサインの概念は全く別個のものなのですが、これが17世紀に変えられてしまった最大級の発明・創作になるものです。

 ここで再確認ですが、プライマリー・モーションとは、「主たる動き」という意味です。誰でも把握できる動きとも言えます。日々の太陽や月の動きは誰にでもすぐに把握できるものです。東から出て天頂に達し西へと沈んでいく動きです。これがプライマリー・モーションです。

 セカンダリー・モーションは、太陽が季節を経て… 左回りに構成されているサインの配置がそれです。惑星たちはセカンダリー・モーションで動きます。この幾分高度な概念がセカンダリー・モーションです。もしも、ハウスもサインもセカンダリー・モーションなら、西洋占星術にプライマリー・モーションと名付けるものが入っていないことになります。主たる動きは大事なのではないでしょうか。それは、どこに?

 何を言いたいのか分かってきたかもしれません。ハウスがプライマリー・モーションでできているのです。そんなバカな!  番号は明らかにセカンダリー・モーションで付けられています。そう、これに騙された西洋占星術家は実に多く、本まで書いて世にどんどん広めてしまったのです。

 その昔、ハウスには番号が付いていませんでした。誰も間違えることなく、ハウスを捉えていました。例えば、3ハウスには「Dea」女神のハウスとして月の固有名詞の名前がちゃんと付いていました。ですから、月の意味として伝わっていたのです。誰も、水星のハウスなどと考えてこなかったのです。ハウスの支配星と、ハウスを構築するためのジョイとなる惑星は下記のように配分されていました。
 

ハウスの支配星(内側)と、ジョイ(外側)

 上記のハウスの支配星を見ると、日本語の本になっているものと一部違っているはずです。クリスチャン・アストロロジーもそうなっているのですが、図を書いて並べてみるまで気付けません。チャートを見ていただくとお分かりのように、1ハウスに土星を配してから、カルディアン・オーダーという並び順に順番にセカンダリー・モーションで2ハウス → 3ハウス → 4ハウスへと配されています。それがセカンダリー・モーションだからといって、ハウスの意義もセカンダリーに組み立てられているとは断言できません。

 考察は、これで終わりではありません。

 JOY(ジョイ)となっている惑星が書き込まれていますが、ハウスの意味を構築するうえでは重要な惑星です。又、ジョイとなった惑星を調べないとハウスの意味がハッキリしないのです。ハウスのジョイは、サインのイグザルテーションが7つあるように、7つしかありません。しかし、ジョイとハウスの支配星だけでもすべてのハウスは説明し切れません。この他に必要な概念は、太陽の日々の動きです。

 そう。太陽の日々の動き(プライマリー・モーション)こそが大きなハウスの意味の構成要素になっているのです。まず、アングルとケーダントという言葉について軽く説明しておきたいと思います。
 

アングル と ケーダント

 
 アングルは「角」というラテン語です。英語でもアングルと言いますし、アンカーとか、ピボットとも言います。ケーダントはラテン語で「落ちる」という意味です。さて、ケーダント・ハウスはアングル・ハウスから落ちているのでしょうか、サクシダント・ハウスから落ちているのでしょうか?

 落ちるというからには、落差が大きいことを指しています。アングルから落ちているのです。サクシダントからだと、少しの落差しか無いことになります。1世紀のマニリウスの書いた占星詩の中にも、10ハウスに入っている惑星たちが9ハウスへと落ちていく様子が描かれています。このように、私たちはアングル・サクシダント・ケーダントの組み合わせを間違えて捉えています。その原因は円形のチャート作成方法にも一助あります。昔の人たちは円形のチャートをコンパスを使ってあまり描かなかったようです。四角いチャートを見ていたので、間違えようがありませんでした。下記です。

 私たちは円形のチャートを日ごろ見慣れているので、どうしても、3ハウス・2ハウス・1ハウスをセットだと考えてしまいがちです。でも、上記のチャートを見ていた古代の熟達者たちは、2ハウス・1ハウス・12ハウスがセットだと考えていて当然だったのです。

 もっとも、ケーダントという意味には西洋占星術上、もう1つ別の意味があります。それは、アセンダントからのケーダントという使い方で、アセンダントから見えないハウスのことを指します。その場合は単にケーダントとは言わず、アセンダントからのケーダントと名指ししますから間違えることはありません。それは、アセンダントから見えないハウスのことで、2ハウス・6ハウス・8ハウス・12ハウスのことを指します。
  

天球儀

2.ハウスを形成する惑星や要素

 ハウスは、どのように意味付けされてきたのでしょうか。

 太陽が東の空から昇ります。日の出は12ハウスで起きる現象ではなく、明らかにアセンダント、1ハウスで起きるものだと古代の占星家は定義付けています。5度ルールといったものをご存じの方も多いでしょう。では、どんな場合でも5度戻れるのかというと、そうではありません。アセンダントが獅子のサインの2度だったら、2度しか戻れません。そういうものとして古代の占星家は定義付けたのです。これは、そのハウスの理論の背後にホール・サイン・ハウス・システムが横たわっているからです。

5度ルール

 何となく、ハウスは右回りかもしれないと思われてきたのではないでしょうか。東の空から星々が上昇する意味が、これまでの占星術の中に入っていたでしょうか? そういえば、無いな~ と思えた方は相当占星術に入れ込んでいる人です。そうかもな~ と考えた人は、伝統的な占星術を学んで損はありません。絶対に左回りだと頑固に考えた人は、その理論をぜひ推し進めてください。これから述べることで、どんどん反論できなくなります。

 太陽の時間(惑星時間の1時間)の次は、金星の時間になり、次は水星の時間、月の時間、土星の時間、木星の時間、火星の時間、そして、太陽の時間と西洋占星術が始まって以来、ず~っと連綿と続いてきました。歴史の中を潜り抜けて連綿と続けられていることは、とても稀な事です。

 この時間を支配する惑星の並び順を、カルディアン・オーダーと呼びます。ですから、カレンダーと深い関係があり、月曜日、火曜日、水曜日・・・ を形成しています。惑星の並び順の方は、月・火星・水星と並んでいるわけではなく、上記のプトレマイックな天球にあるように、土星・木星・火星・太陽・金星・水星・月・土星・木星・・・ と連綿と続く並び方になります。

 例えば、日曜日の日の出とともに太陽の時間となれば、日曜日の次の1時間は金星の時間、次は水星の時間、月の時間、カルディアン・オーダーの元の配列に戻って、土星の時間、木星の時間、火星の時間、太陽の時間と24回くぐり抜けます。すると、25回目、つまり、日曜日の日の出から数えた次の日の日の出である25時間目に、月の支配する時間になります。つまり、月曜日になるわけです。

 このように、私たちは地球中心説に基づく惑星時間によって、月曜日から日曜日までを決定しているのです。カルディアン・オーダーの痕跡は西洋占星術の中だけに留まらず、今日の生活にも生かされています。惑星は七つです。