2ハウス


 2ハウス。所有物のハウス(House of Substance)。”冥府の門”などの名前を持ちます。何故 “冥府の門” なのかというと、オポジションの8ハウスが死のハウスなので、輪廻転生思想をそのベースに持ったメソポタミアの宗教が関係しています。西洋占星術では、冥府からこちら側に逝(かえ)ってくるハウスとして、ここを捉えたのです。こちらから冥府へ行く8ハウスのオポジションだからです。 

 2ハウスの支配星は木星です。1ハウスのときと同じ図を出しておきます。

ハウスを司る惑星
ハウスの支配星と、ジョイ

 2ハウスにはジョイがありません。ですけれども、ほぼ木星の意味と、2ハウスという位置に関連する意味がここにあります。アセンダントとアスペクトを取れないハウス(30度)として、弱いハウスになっています。

 2ハウスの特徴は、生まれる前の静かな場所です。アセンダントに向かう惑星たちが(つまり、ハウスは右回りで移動しています)、しばしの停滞を見せる所で、植物であれば種の中の養分だけで成長を遂げている状態、卵生の生命体であれば、栄養分となる実を体内に取り入れながら細胞分裂を繰り返している最中です。哺乳類であれば、滋養分はお母さんの血液を通して供給され、日一日と子宮の中で少しずつ成長する過程です。外から見ると静かですが、その内部では盛んに成長をしているとも言えるでしょう。

 2ハウスには必然的にそれらの意味合いが込められていきました。滋養分とは、生命体となって生まれてしまえば、それを得る手段は食物となります。従って、2ハウスには、滋養分、栄養、食べ物といった意味が込められたのは不思議ではありません。生命体が生まれてからは、植物を育てる根から吸収する栄養素と水、葉から太陽の光と共に光合成によって作られる養分、動物や人ならば肉体を支える、肉体を養う食物となり、ひいては、食物を得るために交換できる財(所有物や金銭)となりました。2ハウスを司っているのは木星ですから、木星にこそ財産という意味が付いて回ることになります。
 

 ◆ 2ハウスの中心的な意義

 
 財産のハウスとされているのは、上記のような生命体誕生のプロセスから与えられた意味となっています。支配星は木星で、木星は食物の意味を持ち、特にその国の主食という意味を持ち、ひいては、木星に財産・資産・お金という意味が与えられました。ですから、自分のポケットマネーの行方を占うのには2ハウス、そして、財産のナチュラル・ルーラーである木星、そして、財産を表すとされる P.o.F のディスポジターを頼って判断をすることになります。
 ※ P.o.F の場所そのものには意味はありません。P.o.F の惑星とは
  計算式に使う、“太陽”、“月”、そして“P.o.F” が置かれたサイン
  のディスポジターとなります。

 アセンダントへの上昇のさ中にあり、やがてアングルに行ける位置となるので、それほど悪く言われるわけではありません。しかし、後ろから4番目に弱いハウスとなっています。(他のサインが、良いのです)
 

 ◆ 2ハウスの支配星、木星の意義

 
 土星と木星には、明らかに物質といった意味合いが込められています。西洋占星術のキャラクターがそれを証明します。) は心、+ は物質、〇 は魂を表しますが。土星は、物質[ + ]が心[ ) ]を上から支配した形[♄]であり、木星は、心が物質を優しく支配する形[♃]となっています。物質的な要素を持った惑星は、他にもありますが、物質の両方で組み立てられているのは、土星と木星のみです。

 

 ◆ 2ハウスの使われ方

  
 2ハウスの解釈でよく使われるものは、ホラリーでは財産の行くヘです。

 ネイタルでの財産状態の判断は、2ハウスを使う前に、ざっくりとした物資的なものに恵まれるのかどうかを調べる方法があります。それは、昼生まれか夜生まれかで、ルミナリーズ(太陽か月)のどちらかを使います。昼であれば太陽を、夜の生まれであれば月を使います。昼のチャートとは、太陽が地平線より上にあるものです。従って、夜のチャートは太陽がちょっとでも地平線の下にあれば、夜ということになります。

 太陽か月を選び出したならば、入っているサインのエレメントのトリプリシティーを観察します。非常に簡単です。トリプリシティーとは、3つの惑星のことで、下記のようになります。

サインのエレメントのトリプリシティーの惑星たち

 上図から、例えば夜の生まれで月が牡羊のサイン入っていたならば、牡羊のサインは火のサインなので、トリプリシティーは、太陽・木星・土星となります。夜の生まれの場合、夜のトリプリシティーが先に来るので、木星・太陽・土星となります。ここで、下記のようなチャートだとすると、

夜のチャートで月が火のサインに入っているもの
夜のチャートで、月が火のサインに入っている
トリプリシティーは、木星・太陽・土星の順番

 
 幼少期の財産状態(物質的な環境)は、最初のトリプリシティーの木星が示します。アングルに入っているので、その人にとって良い状態です。

 中年期の財産状態は、太陽によって示されます。サクシダントに入っているので、生まれたころよりも少し少なめな状況に置かれます。

 老年期の財産状態は、土星によって示されるので、アングルにあることを見つけたならば、良い状態となります。

 
 これらは、ざっくりとした観察方法です。全体としてどうかというのは、これをベースにして財産状態を推し量ることになります。2ハウスのロードの木星、P.o.F のディスポジター、財産のナチュラル・ルーラーである木星は、このチャートの場合2ハウスのロードとなっているので、二度見る必要はありません。

 
 このチャートは、ホール・サイン・ハウス・システムで描かれていますけれども、おそらく、どのようなチャートの判断でも、このシステムがベースに置かれて判断されていた事だけは分かっています。実際に、古代の占い師たちは、どのハウス・システムを使っていたかは窺い知ることは難しいのです。

 
 ベース(基礎)はベース(基礎)として、その上に宮殿(チャート)が建てられています。これは、占星術の基礎にもなっています。

 
 その意味で、このような簡便なチャートの観察方法は、周りの人々を観察するのに手間はかかりませんし、納得もできるものと思います。

 
 今日、ペルシャ語やアラビア語からも西洋占星術の本が英訳され始めているので、研究も進み、かなり古代の方法に肉薄できる日がやって来るの可能性もあります。その中で、古代でもまだ研究が進んでいなかった部分もあるでしょう。それを私たちが埋めるためにも、古典の研究を疎かにすることはできません。なにしろ膨大な文献があるわけですから、それを知らずに将来の発展は無いと考えられます。一部には、新しいものを創作しようとする動きもありますが、その新しいものも、古典と比べての優位性のあるものだけが残っていくものと思われます。何故なら、現在は比較の対象にならないかもしれませんが、比較するものが出てくると、比較せざるを得ず、どちらが理論的かが検討されるはずだからです。ボナタスやウィリアム・リリーも経験から自分の意見を書いています。例えば、ボナタスは、

 
 古代の人たちは、ドラゴン・ヘッド☊が良いことも悪いことも倍加し、ドラゴン・テイル☋は、良し悪しを半減すると書いているが、私はそれを見つけられなかった。ドラゴン・☊ヘッドは良い、ドラゴン・テイルは悪い、と割り切っても良い、というようなことを述べています。ウィリアム・リリーもこの意見に賛同しています。私も、この意見に賛同します。

 
 というような、長い時間を経過しても、真実が確かめられるものは残っていくのだと思います。ちなみに、私の意見は、長い間に、ドラゴン・ヘッドやテイルの意味が異なってくるのだと思っています。どのような要因で変化をするのかは分かりません。しかし、古代の占星家も、正しいことを書いていたとすると、そうとしか考えられないのです。

 
 どの時代の占星家も、アングルの意味が変わった、とかは書いていないので、このような基礎的なことが変わるわけはありません。アングルは強いハウスです。サクシダントも、それに続く強いハウスです。ケーダントは、弱いハウスです。2ハウスは、アングルからのサクシダント・ハウスで、1ハウスからのケーダント・ハウスです。