9ハウス


 9ハウスの意味は、ジョイの太陽の事柄(意義)で埋められています。支配星は木星ですが、あまり木星の意味が出てきません。神の部屋(The Deus)又は、宗教のハウス(House of Religion)などの名前を持ちます。では、何故 “太陽” がこのハウスのジョイとされるのかをお話ししておきたく思います。

 
 太陽は、サインでも、ハウスでも、最も暑くなる場所を与えられているからです。サインでは、一年のうちで最も暑い夏のサイン獅子のサインを与えられ、ハウスでは、一日のうちで最も最高気温をマークし易い場所、9ハウスを与えられているからです。人は、神の精神性に一歩でも二歩でも近づきたいと願うことから、宗教のハウスとされています。人生の目的でもあります。

 
 9ハウスの持つ旅の意味は、人生の目的が神への旅であると捉えたからでしょう。また、死への旅と捉えたのかもしれません。それはけして後ろ向きの感情ではなく、立派に死にたいとの前向きな捉え方から来るものだと思わせます。この「人生は旅である」との捉え方から、9ハウスが旅のハウスになっています。オポジションの3ハウスは、小さな旅の繰り返し、小さな積み重ねられていく日常の経験です。その集大成が「死」であり、旅の最終地点にもなっています。そして、実際の死は、右回りの次のハウス、8ハウスで迎えることになります。

 
 宗教に関係があることから、教会や寺院、修道僧や僧侶を表します。高い精神性や、それそのものを求める倫理観や、人としての理想を表します。夢は、9ハウスです。太陽は高い世界から真実をもたらし、それが夢として現れるのだと古代の人々は考えました。真理の使者として、夢が来るのだとしたのです。広範囲に伝えられること、マス・コミュニケーションがここです。

 
 太陽神アポロンは、その強い光でこの世だけではなく、過去や未来をも見通すことができるのだと考えられてきました。デルフォイの神殿は、アポロンによる神託が授けられる場所として、多くの参拝者で賑わった時代もありました。未来を見通すこととは、占いもその一翼を担っています。占星術師たちは誇りをもって、9ハウスは西洋占星術のハウスだと宣言したのです。

 
 9ハウスの支配星は木星です。1ハウスのときと同じ図を出しておきます。

ハウスを司る惑星
ハウスの支配星と、ジョイ

 9ハウスの意味は、ほぼ太陽の意味でできています。支配星の木星の意味は、宗教という部分に残ってはいますが、あまり多くはありません。太陽がジョイとなるゆえに、オポジションの3ハウスと対比されることがよくあります。

 ◆ 9ハウスの中心的な意義

 

 ◆ 9ハウスのジョイ、太陽の意義

 
 土星と木星には、明らかに物質といった意味合いが込められています。西洋占星術のキャラクターがそれを証明します。) は心、+ は物質、〇 は魂を表しますが。土星は、物質[ + ]が心[ ) ]を上から支配した形[♄]であり、木星は、心が物質を優しく支配する形[♃]となっています。物質的な要素を持った惑星は、他にもありますが、物質の両方で組み立てられているのは、土星と木星のみです。

 

 ◆ 9ハウスの使われ方

  
 2ハウスの解釈でよく使われるものは、ホラリーでは財産の行くヘです。

 ネイタルでの財産状態の判断は、2ハウスを使う前に、ざっくりとした物資的なものに恵まれるのかどうかを調べる方法があります。それは、昼生まれか夜生まれかで、ルミナリーズ(太陽か月)のどちらかを使います。昼であれば太陽を、夜の生まれであれば月を使います。昼のチャートとは、太陽が地平線より上にあるものです。従って、夜のチャートは太陽がちょっとでも地平線の下にあれば、夜ということになります。

 太陽か月を選び出したならば、入っているサインのエレメントのトリプリシティーを観察します。非常に簡単です。トリプリシティーとは、3つの惑星のことで、下記のようになります。

サインのエレメントのトリプリシティーの惑星たち

 上図から、例えば夜の生まれで月が牡羊のサイン入っていたならば、牡羊のサインは火のサインなので、トリプリシティーは、太陽・木星・土星となります。夜の生まれの場合、夜のトリプリシティーが先に来るので、木星・太陽・土星となります。ここで、下記のようなチャートだとすると、

 
 幼少期の財産状態(物質的な環境)は、最初のトリプリシティーの木星が示します。アングルに入っているので、その人にとって良い状態です。

 中年期の財産状態は、太陽によって示されます。サクシダントに入っているので、生まれたころよりも少し少なめな状況に置かれます。

 老年期の財産状態は、土星によって示されるので、アングルにあることを見つけたならば、良い状態となります。

 
 これらは、ざっくりとした観察方法です。全体としてどうかというのは、これをベースにして財産状態を推し量ることになります。2ハウスのロードの木星、P.o.F のディスポジター、財産のナチュラル・ルーラーである木星は、このチャートの場合2ハウスのロードとなっているので、二度見る必要はありません。

 
 このチャートは、ホール・サイン・ハウス・システムで描かれていますけれども、おそらく、どのようなチャートの判断でも、このシステムがベースに置かれて判断されていた事だけは分かっています。実際に、古代の占い師たちは、どのハウス・システムを使っていたかは窺い知ることは難しいのです。

 
 ベース(基礎)はベース(基礎)として、その上に宮殿(チャート)が建てられています。これは、占星術の基礎にもなっています。

 
 その意味で、このような簡便なチャートの観察方法は、周りの人々を観察するのに手間はかかりませんし、納得もできるものと思います。

 
 今日、ペルシャ語やアラビア語からも西洋占星術の本が英訳され始めているので、研究も進み、かなり古代の方法に肉薄できる日がやって来るの可能性もあります。その中で、古代でもまだ研究が進んでいなかった部分もあるでしょう。それを私たちが埋めるためにも、古典の研究を疎かにすることはできません。なにしろ膨大な文献があるわけですから、それを知らずに将来の発展は無いと考えられます。一部には、新しいものを創作しようとする動きもありますが、その新しいものも、古典と比べての優位性のあるものだけが残っていくものと思われます。何故なら、現在は比較の対象にならないかもしれませんが、比較するものが出てくると、比較せざるを得ず、どちらが理論的かが検討されるはずだからです。ボナタスやウィリアム・リリーも経験から自分の意見を書いています。例えば、ボナタスは、

 
 古代の人たちは、ドラゴン・ヘッド☊が良いことも悪いことも倍加し、ドラゴン・テイル☋は、良し悪しを半減すると書いているが、私はそれを見つけられなかった。ドラゴン・☊ヘッドは良い、ドラゴン・テイルは悪い、と割り切っても良い、というようなことを述べています。ウィリアム・リリーもこの意見に賛同しています。私も、この意見に賛同します。

 
 というような、長い時間を経過しても、真実が確かめられるものは残っていくのだと思います。ちなみに、私の意見は、長い間に、ドラゴン・ヘッドやテイルの意味が異なってくるのだと思っています。どのような要因で変化をするのかは分かりません。しかし、古代の占星家も、正しいことを書いていたとすると、そうとしか考えられないのです。

 
 どの時代の占星家も、アングルの意味が変わった、とかは書いていないので、このような基礎的なことが変わるわけはありません。アングルは強いハウスです。サクシダントも、それに続く強いハウスです。ケーダントは、弱いハウスです。2ハウスは、アングルからのサクシダント・ハウスで、1ハウスからのケーダント・ハウスです。